「まだ
"完璧"を求めなくていい」

「・・・?」

「"あさぎ"になればいいだけ。
難しく捕らえちゃいけない。」


私の顔に出ちゃってるんだ。
監督は肩を軽く揉んで叩いた。


「あの"親指姫"の様にさ。」

「・・・はい」


あれは正直な所、
追い詰められたギリギリの
仕事だった。

考えていた、親指姫の
人生は波乱万丈だなって。

蛙やコガネムシに誘拐されて
置き去られ野ねずみに拾われ・・
もぐらと危うく結婚、
ツバメに救って貰い、
花の王子と結ばれた。

ちょっと
人間臭い所も垣間見え
変な話、愛おしいなぁなんて。

"あさぎ"って子も
現実社会での彼を偶然知り、
恋は盲目と云わんばかりの
誰もがしそうなバカをしたり。

言葉が話せても伝えられない
事って多すぎる。

『けれど彼女はそのもどかしさ
さえ、感じさせない』・・・?

感じさせてはいけないのだ。
例えば・・空気の様な・・?



「・・・・OK!」



模索しながらも段々と
何か掴めた気がした・・。

今日の私の分の撮影終了時刻
20時を回っていた。

それから予約してあった
睫パーマと、エステへ急ぐ。

そう、明日は
問題の例のシーンを撮るからだ。

ジュードさんには勿論
云っていない。

だいたいがオカシイ。

ベッド・シーンとは云え
胸から下はちゃんと
服を着ている。

たった、
"腕枕での目覚め"だけの
ワンシーンなのに
なんでそんな
神経質になるんだろう・・?