私が一番恐れていた、
最初の難関・・。

映画、"ソウル・ブルー"の
製作発表であるその当日。

総監である天美監督と
主なキャスト

荒木孝平 (20歳)栗田ミツル
守屋あさぎ(17歳)Sia
守屋ヒロト(25歳)三木快人。

この四人で出席。

前もって、
映画関係の話しかしない様に
取材陣の方には注意をしていた。

が。

ルールとは破られるものの様で。
最後の最後で私宛の
私的な質問が飛び交うのだ。


「今回、お兄さん役の快人さん
とのベッド・シーンがあると
云う事で、Judeさんは何か
おっしゃっていましたか?」


おっしゃってはいないが

『最近会う度に、Sさ、
フルスロットルで弄ばれてます』

・・とは、云えない。


「はい、終了でーす!」


的にされるのが解っていたらしく
スタッフが会見を
嵐の如く強制終了させてしまった。

裏で私以外、全員が口々に

「いやー、危ねぇー!」

と発して笑い、肩を叩いてくれた。


で、撮影の方だが順調で今日も
スタジオを移り撮影に戻っている。

私の出番は殆ど室内なので
外への移動が今の所は無かった。

私が演じる、"守屋あさぎ"と云う
少女には生まれ付き声帯がない。
かつては
人工声帯を着けていた事もあった。

だが、
女子高で酷いイジメにあってから
それを着ける事も拒否、不登校
そして中退、引き篭もってしまう。

美しいものしか愛せない兄に溺愛
され、彼にしか心を開かない・・。
そんな陰のある少女だった。

表情と仕草だけで演じるのは本当に
難しい。素人同然の私だが、
集中力だけが頼りで、彼らの台詞
一言に寸分の油断もできないのだ。

かと云ってピリピリしていると、
直ぐにカットの声が飛んでくる。


「シイ、もっと力抜いてこぅ!」

「すみません」

「ちょっと休憩すっか」


皆、周りは
普通にしているが不安にもなる。
足を引っ張ってはいないだろうか?

他の女優さんの現場って、
どんな風なんだろう・・?


「っあ。」


メイクさんが離れたと思ったら
いきなり両肩を後から掴まれた。