「ヒドイと思わない・・?
たったコレだけだよ?
こんなさあ・・。」


俺は男どもと
自宅のダイニングで片脚立膝で
ワインを呷りながら

彼女の残した便箋を
ピラピラ、パタパタ
手で靡かせてボヤいていた。

やっと
ドラマの方もクランクアップ、

そして
レコーディング前の休みを
彼女と過ごそうと思ってた。


「んー・・シーちゃんももう
大人みたいなもんだし、
色々考えたいンっすよ・・。」


那須のファンサイトにも
彼女からお詫びのメッセージを
事務所から乗せた所だったんだ。

さすが彼のファンだけあって
ファンの質が
皆"母ちゃん"みたい。

『こんなアホでも
お役に立てて良かった。』

・・みたいな優しい(?)言葉が
板にはたくさん書き込まれてた。

それも今日教えてやろうと
思っていたのに・・だ。


「わんこも一緒なんだよね?
だとしたら泊まるトコなんて
限られてるんじゃない?」


カウンターのパソコンを弄って
る那須と後からグラス片手に
それを覗き込んでいるサクヤ。


「星の数ほどはないっすけど
パネぇ数だから・・ホラ。」

「・・・ホントだ。」


"犬と泊まれる宿"は今や
何所にでもある。
ネット検索しても無駄だ。


「も・・いいんだサクちゃん。
ほっといたらいいんだ・・。」


グラスの赤ワインをクルクル
回してまた口に含んだ。

もう味なんて解らない・・。
これ、
何本目のワインだったっけ。


「解ってあげて・・。
こんな短期間で3人だもん。
普通でいられる方が怖いよ。」

「活動休止って言うのも・・
本人には堪えたンとちゃうの?」


あくまで・・事務所側の
配慮でもあったんだけどね。


「・・・うん。」


悪い方に考えてなきゃ
いいんだけどな。

俺としても
そっちの方が心配だったんだ・・。

せめて携帯ぐらい、
繋げといて欲しいよ。
声ぐらい・・聞きたいだろ?