「もうそろそろ仕事に戻ったほうがいいじゃない?俺ももうひとつ行くところあるし。」

拗ねて睨みつけるように幸太さんが手で払う仕草を見せて。

「ここは出すから、お前はさっさっと消えろっ。」

「じゃぁ、ご馳走になるね。ありがとね、また連絡から。」

一人で店を出た。

幸太さんは学生アルバイトの女の子をからかって楽しくなり飲み続けたいらしくそのままバーに残った。
赤い顔して会社に戻って仕事をするつもりらしい。
そのまま仕事をほったらかして帰るつもりだろう。
俺はひとり笑った。

二十一時まであと、一時間はある。
パチンコ屋を抜けながら駅まで歩く。
すっかり街のなかは夜らしくなってしまった。

赤信号に横断歩道で立ち止まり、ネオンが輝く街をゆっくり見回す。
綺麗に輝いて見える分だけサラリーマンの寂しさが現れているような街だ。
隙間を埋めるように働いてきた男への慰めを準備できる街。

仮初めでもごまかしきれる。

男はまやかしを買って賑わいに紛れる街。

「秘密」

暗い隠された陰部。
表も裏もあからさまに一夜のまやかし。

恋人はいないで、この街に似合うのは迷彩服のサラリーマンと美しいと思う女だけ。