街の大通りを歩くが、人もまばらで、ほとんどの店がその扉を閉めていた。



「人…いないですね」



そうお師匠様につぶやきながら、マリーはきょろきょろと街の様子を見渡していた。


ほとんどお師匠様と暮らしていた家から出ることのなかったマリーにとって、はじめて見る街は、興味のそそられるものであった。


街は、その荒々しいイメージとは異なり、レンガ造りの家が立ち並ぶ温かいものだった。


領地内のほとんどが森と山である東領独特のものとして、縦に長く伸びた家々が隣接して立ち並んでいるため、マリーの視線は自然と上へ上へとあがってく。


黄色や赤、白などさまざまな色のレンガによって造られた町並みは美しいものだった。


普段であれば、家の窓が開き、通りの人間と会話するなどにぎやかな街であったが、今はその窓もぴっちりと閉じられている。


その中に人が居るのかも、外からうかがい知ることはできなかった。