ユベスクの日。 それは男性が想う女性に、紅色のリボンを渡して、日頃の感謝、愛などの温かな気持ちを伝える日。 毎年この日になると、至る所で艶やかな紅色のリボンが見受けられる。 「この日はね、ずっと昔の‥悲しい物語がきっかけで出来たのよ。 ‥聞きたい?」 唄うように問うおばあさんに向かって、瀬遥は小さく頷いた。 むくりむくりと頭を擡げた好奇心が、胸の奥をくすぐっている。 おばあさんはそれを見て取ったのか、少し笑い声を上げた。 ‥そして、静かに、静かに語り出した。