「大丈夫?」


屈み腰で私を覗き込んでくる男───男の子は、私を気遣う言葉とは裏腹に、にこりにこりと微笑んだ。


優しく笑う子。

こんな醜態を目撃されていながら、そんなつまらないことを考えて、ぱちりと瞬く。

瞬間、落ちた涙がこれで最期だと言うように、盛大な音を立てて私の膝に吸い込まれていった。


誰、と口にする前に。



「隣り、座ってもいい?」

いいわけないでしょ。

しかし私がそれを拒否する前に、青年は大きな体を折り曲げてふわりと隣りに腰掛けた。



「ちょっと、」


思わず、非難の声が上がる。

大の大人が不細工な顔して泣きじゃくってるのに、その隣りに無遠慮に陣取るとは何事だ。


困る。

見知らぬ子供の相手をする余裕なんか、ない。

しかし私の心情などお構いなしに、子供はにこにこと頬を緩めている。

赤鼻がこちらを向いていて、酷くいたたまれない。



しかも距離が近くて、ふたりでまるで山茶花に抱かれているような形になる。



…涙、引っ込んだ。