冷たすぎない風が頬を撫でていく。


さやさやと鳴く葉音や風音に、慰められている気分。

人間おかしな生き物で、最低に落ち込んでいたり、最高に楽しんでいたりする時に限って、普段全く気にしないようなことを敏感に感じ取ってしまうのだ。

細胞が色々な意味で過敏になっているのかもしれない。


今はそれが、泣きたくなるほど心地良い。




(…泣きたくなっちゃう)


考えた途端、再びぽろりと滴が落ちた。

はたはたと頬の膨らんだあたりで途切れて落ちるそれは、風に吹かれて向きを変えた。


…しょっぱい。


私を取り巻く全ても、涙も、全部しょっぱい。

子供みたいにしゃくりがこみ上げた。


無意識。

心臓に手を宛てて、三角座りのまま膝ふたつに額を押し宛てた。

ひくひくと目元が痙攣してそれに促されるように涙はぽとぽと落ちていく。

大粒が落ちる度にぱたぱたと音を立てる様は、山茶花の紅が丸ごとが落ちるそれと似てる。



(頑張ってるのになぁ…)


報われてくれない。

一番どうにかなって欲しい問題が、うまく運ばない、から。

なんだかもう、どうしようもなくなって。