その向こう側は、銀髪の、堕天使がいるところ。

 と、急に何かの気配を感じて立ち止まった。

 来る。

 振り返ると、ねずみに似た生き物が、走って来るのが見えた。

 遠近感を疑うようなその巨大なねずみは近づいてくると、ライオンほどの大きさがあった。

 ひえ。

 逃げようかと思った。

 しかし、二つに分かれた頭の、四つの目が、オレに向けられていた。

 ねずみというのは、本来可愛い顔をしているものなのに、その、可愛さを決定付ける黒目が、点ほどの大きさしかなかった。

蛇のような、白目が勝った目である。

 あのくりくりうるうるの可愛い目を、限りなく黒目の小さい目に変えるだけで、ねずみは全く可愛くなくなるらしい。

 異様な生き物が、オレ目掛けて跳んで来る。

 オレは、ブーツに挿した短剣を引き抜いた。