顔を輝かせた女の子が、踊り場に姿を現
わした。

友人を助けた、ヒーローの顔を、一目見てやろうと、期待感いっぱいの目。

そして、その目で倒れたままのオレを見て、思わず

「げっ」

言うと、疾風のごとく階段を駆け下りて来、悪魔の手から守るかのように、鈴菜ちゃんの腕を掴んで走り去ってしまった。

一刻でもオレの傍に留まっていたくない。

その気持ちは、言葉にされなくても充分に伝わってきた。

惨めだ。

何もなかったことにして、下校を再開したいところだけれど。

思いっきり体を廊下や壁に打ち付けたせいで、痛くて動けない。

家路に着こうとしている女の子二人が、気味悪そうにオレを覗き込んで行った。

「ゴリツー、何やってんだろうね」

「嫌だ気持ち悪い」

ゴリツーとは影でのオレのあだ名だ。

ゴリラのようだから、ゴリ。そして、先生の一人に『ゴリ』と自ら名のる先生がいる。