鈴菜ちゃんは、体の方は無傷だったらしく、ぱっと跳ね起きた。

そして、恐怖に引きつった可愛い顔ではっとしたようにオレを振り返った。

「あっ、ありがとう。助けてくれて」

強靭な意志の力と彼女の持つ本来の優しさゆえに、鈴菜ちゃんは、自分を抑え微笑んだ。
 
けれど、その、潤んだ目には、隠し切れない嫌悪感が滲み出ている。

「いいんだ。君が無事なら」

「たっ、立てる?」

「うん。大丈夫」

オレは目を伏せた。

オレは決して見目麗しいとはいえない。

むしろ、女の子の嫌がる見た目でできている。

「鈴菜!!大丈夫だった!?」

 階上から、女の子の声がした。

「うん。受け止めてくれたから」

「誰がっ?」