恋口の切りかた

あの後、俺は顔を合わせづらかったのだが──鳥英が、遊水から肝試しの晩に別れ際に預かったという文を持ってきて、そこには


「円士郎様の部下も是非同席させてほしい。秋山隼人殿も、より本気で捜査に取り組めるようにして差し上げましょう」


という内容が書かれていたのだった。

どういう意味なのか気になった俺は、「俺はとっとと帰りてーんだよ……!」と文句を言う隼人を、

「まーまー。事件の手がかりがつかめるかもしれねえんだ。常識のあるお前にも話を聞いておいてもらおうと思ってな」

などとなだめつつ、無理矢理引っ張って居店に向かった。

「俺は生まれてこのかた、自分が常識人だと思ったことなんかなかったぞ。あんたらと知り合って初めて、自分がまだ常識ある人間なんだって知ったよ……!」

隼人はそんな風に愚痴りながらついてきて、

いつもの土間の縁台ではなく、遊水は奥の座敷で俺たちを待っていた。


隼人はこの異国の風貌の操り屋に明らかな不審の目を向けていて、

留玖を女だと一発で見破ったことと言い、
狐の屋台を前にして命を救われたことと言い、

俺は自分が選んだこの部下を、改めて信頼できる奴だと実感した。


「円士郎様が聞きたがっていた、白輝血の兵五郎に用心棒として雇われている蜃蛟の伝九郎ってェ凄腕の剣客についてですがね」


運ばれてきた酒の杯を口に運ぶ隼人と俺の向かいに座って

遊水は、宗助ですら調べられなかった男の正体をいとも簡単に語った。


「何でも『闇鴉』って白浪の一味らしいぜ」


白浪。

つまり──


「──盗賊か」