恋口の切りかた

なんて思っていたら、この日のうちに俺は、宗助からとんでもない衝撃の事実を知らされることになるのだが。



「良かったな、留玖。カラクリ人形だったってハッキリしたんだ。もう怖くねーだろ」

俺は夜明けの道を屋敷に帰りながら留玖にそう言って──

「何が! 動く死体見ちゃったんだよ! これから夜、どうすればいいんだよぅ」

留玖は涙目になってカクカク震えていた。


そう言えば狐の屋台に遭遇してすっかり忘れていた。


「あー、あれな」

俺は荒れ寺で見た、妖艶な尼僧を脳裏に描く。

「怖がらなくても、あれは多分──生きた人間だぜ」

「なに言ってるの! 目が! 目が腐って落ちてたっ! あんなの生きた人間のワケないよぅっ」

余程怖かったのか、留玖はまたしても半狂乱に陥りそうな様子だった。


目が腐って落ちたのではなく、あれはおそらく……


俺は、以前話に聞いたある人物を思い浮かべた。


「ま、どうやら遊水はあの『死体』と知り合いみてーだし、留玖が安心して眠れるように、そっちの話も早く聞かねえとな」


そう何度も一つの布団で眠ることになったら、本当に自分を抑えられる自信がないぞ俺。


幸いなことに、この日は屋敷に戻ったら既に夜が明けていたので留玖も一人で眠ることができたようで、

陽が高くなるまで眠りこけていた俺は、昼過ぎに読経の声で目が覚めた。


例の開かずの間の御祓いだとかで、これからしばらくは毎日、坊さんだの修験者だのを呼んで経を上げさせたり、呪文を唱えさせたりするらしい。

「こんなのが知れ渡ったら、結城家は武芸の家だと言いながら祟りが恐ろしいのかと笑い者になるだろうが!」

俺は仰天してすぐにやめさせろと文句を言ったのだが、祟りがあってからのほうが家名に傷が付くとか何とか、結局母上に押し切られた。


「円士郎様にいくつか報告の儀が」

もう知るか勝手にしやがれとどうでもいい気分でいたら、夕方に宗助がそんなことを言ってきたのだった。