恋口の切りかた

カラクリを調べていた鬼之介によると、どうやらこの狐の人形も人形斎が作ったものに間違いないようだった。

鬼之介は懐から歯車を一つ取り出して見せ、

「こいつは鈴乃森座の仕掛けの歯車なのだが──この部分の形状が特徴的でな、狐の人形のものと一致する」

などと説明した。


「おい、待てよ。てめえが、鈴乃森座のカラクリの歯車なんざどうして持ってる?」

俺が思わず突っ込むと、鬼之介はフッフッフと含み笑いをして、

「前に、与一殿の案内で仕掛けを見せてもらった時にコッソリ一つ拝借しておいた。バレんようにボクが持ち歩いてる歯車と交換してきたから心配するな」

こいつ……いつもそんなモン持ち歩いてんのかよ。

「てめえまさか、与一に舞台の仕掛けを見せろっつった時、ハナッからそのつもりで……」

「当然だ。いかにボクとて、カラクリを見ただけでは同じ人物が作った物かどうかなど見分けられん可能性もあるからな」

ううむ、やるな。

俺は鬼之介の抜け目の無さに感心した。


神崎と違い、こちらは発明なんてやってるだけあって頭脳労働向きのようだ。

何はともあれ──


「これで『月読』は殺せたな」


残るは──


「『天照』か……」


しかし月読の仕掛けがそいつのものだとわかった以上、やはり気になるのは人形斎だ。

あの時、ひょっとすると壁一枚隔てた向こうにそいつが潜んでいたかも知れないと思うと、鬼之介の言うように早く気づけなかったことは悔やまれるが──


まあこの催しのおかげで俺には一つ、人形斎に関しては心当たりができたし。