恋口の切りかた

「鬼女じゃねーよ。こいつは町方与力だ」

円士郎が説明している横では、神崎が汗を浮かべて押し黙り、

「やっぱこいつ、番所に突き出すかァ?」

と隼人が言って、神崎の眉間がヒクついたりして──


「あれ?」


私は変なことに気がついた。

円士郎の袖を引っ張る。


「鬼之介、てめえも武士なら、そう何度も腰抜かしてんじゃ……ん? どうした留玖」

「あれ……あそこ、まだ灯りがある」


私は震える指で、鬼之介が走ってきた方向──先程明かりが灯った場所を示した。


鬼之介はここにいるけれど、
暗闇の中にはもう一つ、赤々とした灯火が、柳の並木の向こうに見えていた。


皆も一斉にそちらを見て──


顔を見合わせた。



隼人が役目だから何なのか見てくると言って、円士郎と神崎も後に続き、
何なのかわからないままなのは怖かったので、私もくっついて行くことにした。


「おーい、待て! ボクを一人にするな!」

後ろからは、座り込んだままの鬼之介の声が聞こえていた。