恋口の切りかた

「何だ?」

隼人が足を止めて、目を凝らすようにした。

「こんな時間に、あんたら以外に……」

円士郎や、鬼女の格好をした与力も不審そうにそちらを見た。

私は再び円士郎の袖をそっとつかんだ。


灯りはゆらゆら揺れながらこちらに向かってきて──


「おーい」

と、声がした。


「良かった! おーい、そこの人」


「ん?」と、円士郎が首を傾げた。


あれ? この声は……


近づいてくるのは提灯の明かりだった。

走っているらしく、提灯は弾みながら近づいてくる。


「おーい、聞いてくれえ! 今、あばら寺で動く死体の女の目から、ポロリと目玉が……」


「……鬼之介じゃねーかよ」

ボソリと円士郎が呟いて、


「人がいて助かった……ん?」

提灯を片手に走り寄ってきた鬼之介は、白装束の神崎を目にして

「ぎゃああああ──!? 鬼女!?」

叫んでその場に座り込んだのだった。