恋口の切りかた

「呪う? 何のことだ?」

神崎は眉間に深い皺を刻んで首を傾げた。

「しらばっくれんな! こんな深夜に神社の境内で──シャレになってねえぞ!」

俺は神崎が木刀を叩きつけていた神木を眺めた。

「見たところ……藁人形は見当たらねえみたいだが、何のつもりだ」

「藁人形だと?」

神崎は眉をひそめ、

「そんなものがあるワケなかろう、丑の刻参りではあるまいし」

などと、ザンバラ髪の鬼女姿で言った。




「俺はただ、日頃の憂さを晴らしていただけだ」




「憂さ晴らしって──」


俺はしばし絶句して、


「──自分がどんな格好してるのか、自覚はねえのかよ!」


白装束で髪を振り乱し、蝋燭を生やした与力の姿に、思わずツッコミを入れた。


「頭にこんなもんくくりつけやがって……アンタ、城下の七不思議になってるぞ」