恋口の切りかた

「結城の円士郎に、十兵衛──!」

俺と留玖を交互に眺めて、
深夜の境内で、鬼女さながらの格好で木刀を振るっていた若い与力は固まった。

「寄るな! 来るなあ──!」

俺の横では、未だ半狂乱で留玖が刀を振り回していて、

耳元をビュッと風を切って刀が掠めた。

「うおッ!? 馬鹿、危ねえ! 落ち着け!」

俺は慌てて、留玖の手元を押さえて動きを封じた。

普段の留玖相手にはとてもできない芸当ではあるが、我を失って滅茶苦茶に刀を動かしているだけならば容易だった。

「落ち着けって、こいつは鬼女じゃなくて町方与力の神崎帯刀だ」

「……カンザキタテワキ?」

留玖がしゃくり上げながら、ようやく腕から力を抜いた。

何とか留玖が落ち着いたのを見て、俺は硬直している鬼女を睨みつけた。


この野郎……!


留玖をこんなに怖がらせやがって──と言うか、


「てめえ、事もあろうに夜な夜なこの俺様を呪ってやがったとは──いい度胸じゃねえか」


クソ、呪いの類は信じていない俺でも、さすがに気分のいいものじゃねーぞコレ。