恋口の切りかた

音に重なって、何か低い
うめきのような、
うなりのような、
獣の声とも人の声ともつかぬ響きも届いた気がした。


「何だ?」


円士郎がさっと表情を険しくして、周囲を見回した。


ざわざわと社殿の周りでは漆黒の樹木が風に揺られて騒ぎ、先程までとは打って変わってその様は不気味に見えた。

私は気のせいだと思いたかったけれど、


コーン、コーン……

「……呪ってやる──……──死ね……──」


耳を澄ますと、恐ろしい音と声とがハッキリ耳に届いて、私は凍りついた。

低い獣のような声は、人のものとも思えなかった。


刻限は──ちょうど丑の刻にさしかかっているのではないだろうか。



鬼女だ。



やっぱり噂は本当だったんだ。



私は一刻も早くこの場から離れたいと思ったのに、

「社の後ろからか……?」

円士郎が呟いて、社殿の裏手に向かって歩き出したので私は泣きそうになった。

「や、やめようよ……」

蚊の鳴くような声をかろうじて絞り出したけれど、円士郎は聞いてくれなくて、

一人でこの場に残るなんてもっと怖かったため、
結局、私は円士郎の袖をつかんだまま半泣きでくっついて行くハメになった。


社殿の後ろに回ると、そこは樹齢何十年──いや、何百年なのではないかという御神木がそびえる雑木林になっている。


コーン、コーンという音はその林の中から響いていて、

円士郎にくっついて音の方へ近づいていくと──