りい、りい、と夏の虫が鳴いていた。
川が近いせいか、せせらぎの音もかすかに聞こえてくる。
町の外れの浄泉寺からは、大通りを通って引き返してきたことになる。
商家が途切れたこの一郭は、ちょっとした林か森のようになっていて、石の階段を上ったこの鎮守の森の奥に、龍神様を祀った社がある。
風が吹いて、頭上で樹木が音を立てて──
けれど不思議なことに、先程までと違って、私はそんなに怖いと感じなかった。
「行くか」と言った円士郎に頷いて、並んで石段を登る。
そんなに続けて怖いことなんて起きねえよと円士郎は笑って、私もそうだねと微笑み返す余裕があって、
実際に、何も起きなかった。
私と円士郎は鳥居をくぐって、いとも容易く社の前に辿り着き、
風で飛ばないように重しの石が置かれたフダを見つけて一枚抜き取った。
これで終わりだ。
私はホッとした。
「怖い思いさせてごめんな、留玖」
円士郎がそんな風に謝って、私はまたどきどきして、
「帰ろうぜ」
彼の言葉に頷いた──
──その瞬間までしか、
しかし私の余裕は続かなかった。
社殿の前から離れようとした時、
コーン、コーン、という何かを木で叩くような音が辺りに響いてきた。
川が近いせいか、せせらぎの音もかすかに聞こえてくる。
町の外れの浄泉寺からは、大通りを通って引き返してきたことになる。
商家が途切れたこの一郭は、ちょっとした林か森のようになっていて、石の階段を上ったこの鎮守の森の奥に、龍神様を祀った社がある。
風が吹いて、頭上で樹木が音を立てて──
けれど不思議なことに、先程までと違って、私はそんなに怖いと感じなかった。
「行くか」と言った円士郎に頷いて、並んで石段を登る。
そんなに続けて怖いことなんて起きねえよと円士郎は笑って、私もそうだねと微笑み返す余裕があって、
実際に、何も起きなかった。
私と円士郎は鳥居をくぐって、いとも容易く社の前に辿り着き、
風で飛ばないように重しの石が置かれたフダを見つけて一枚抜き取った。
これで終わりだ。
私はホッとした。
「怖い思いさせてごめんな、留玖」
円士郎がそんな風に謝って、私はまたどきどきして、
「帰ろうぜ」
彼の言葉に頷いた──
──その瞬間までしか、
しかし私の余裕は続かなかった。
社殿の前から離れようとした時、
コーン、コーン、という何かを木で叩くような音が辺りに響いてきた。



