【漣】
「刀丸!」
俺は血だらけの刀丸に駆け寄った。
冷たい朝の光が、辺りに積もった雪に当たってまぶしく反射している。
生きている刀丸の姿を認めて、最悪の事態は回避されていたことに安心したものの、
刀丸の全身を染める赤い色に、不安で気が変になりそうだった。
「刀丸! 大丈夫か! お前、ケガしたのか!?」
俺が肩をつかんで揺さぶっても、刀丸は泣きじゃくるばかりで何も答えない。
よほど怖い目にあったのか、小刻みに体が震えている。
「おい! 刀丸! 何があったんだよ!」
とりあえず、どこかを押さえていたり痛がっている様子はないようだが……。
「おいって! とにかくその刀置けよ」
俺まで泣きそうになりながら、かたく握りしめた刀丸の手から、血だらけの刀を何とかもぎ取って地面に置いた時だった。
「トウ丸はケガなんぞしとらん」
刀丸の家の周りに集まって、血まみれの刀丸と俺を遠巻きに見ていた村人がそう言った。
「それは全部、盗賊の返り血だ──」
え──?
村の様子だけでも相当衝撃を受けていた俺にとって、村人たちが語った内容は更に衝撃的なものだった。



