恋口の切りかた

がたがた、とよろめいて障子にぶつかるような音がした。


「お、おつるぎ様……?」


宗助でもこんな声を出すことがあるのか、というくらい
物凄く驚いている調子の言葉が降ってきて、

ごほ、げほ。

何やらむせかえる様子があった。


「これは──失礼を」

「おいこら、勘違いすんな! 違うって!」


再び障子が閉まる音に重なって、横で円士郎の慌てふためく気配がした。


「これは留玖が、一人で寝るのが怖いって言うからだな……」

「さ、左様で」

「本当だぞ! 俺は何もしてねえ」


目を開けると、円士郎が半身を起こして「テメエ信じてねえだろ!」とわめいていて、


「いや、大丈夫だ。何かしていたかどうかくらいはわかる。これでも忍なので」


宗助は障子の向こうからそんなことを言った。


「そ……そうなのか」


円士郎が鼻白みつつ、再び布団に潜り込んだ。


「それで、調べ物についてだが──」

「ああ、別に留玖には聞かれて構わねえよ。聞かせろ」


円士郎と宗助はそんな会話を交わして、

私はこの時になって初めて、
宗助が敬語抜きで円士郎に話しかけていることに気がついた。

後日、宗助に聞いたら、
円士郎からの命令で敬語の必要はないと言われた、とのことだった。

「都築様も俺に、同じように仰っていました……」

と、宗助はどこか懐かしそうに、私には敬語でそう語った。