恋口の切りかた

しかしこれは好機だぞ。

ここで頼りになることを見せて留玖を惚れさせることができれば──


──などと思うところなのだが。


残念ながらそんな余裕は俺にはなかった。


女と寝屋を共にすることなど初めてでもないのに、
いや、むしろ遊女たちとの経験があるからこそ、なのか。

邪な考えに支配されそうになって、妙な焦りと緊張が生まれる。



「エン……お願い、今晩だけ……」

懇願する留玖の肩が小刻みに震えているのに気づいて、

大きく息を吐いた。


「お前なあ……」

「ごめんなさい」

「……ここ、一応男の寝所だぞ」


赤くなっているのか、留玖がうつむいた。



据え膳食わねば何とやら。

だが目の前にあるのが据え膳かどうかくらいわからねば、そのほうが恥というものだろう。




俺は覚悟を決めて、己の鋼の精神力を信じることにした。