恋口の切りかた


 【円】

部屋に戻って、

布団の中で一人、


手に残る留玖のか細い体を抱え上げた感触や、

鼻をくすぐるいい匂いを思い出してにやけて、


これまでは渡世人にしか被害は出ていなかったのに、
ここに来て同心が犠牲者となったのはどういうことだろうかと、

真面目な方向に考えを持っていった。


これ以上捜査するなという警告と見せしめか?


それに、やはり気になるのが自分の記憶の中にある狐の顔の男だ。

何故、俺はあれを幼い日にどこかで見た気がするんだ?


答えに届きそうで届かない。
もどかしい思いで、考えを巡らせていたら


耳の奥に、お囃子が蘇った。


祭囃子。

神社の境内。


縁日? 何かの祭りの時に、見たのか?


もう少し、あとわずかで答えに手が届く──

という時に、




すうっと、襖が突然開いた。



反射的に、

身を捻りながら枕元の刀に手を伸ばし

片膝を立てて起き上がって、



抜刀しかけた手が止まる。



「留玖?」



無言でそこに立っていたのは、寝間着姿の少女だった。