恋口の切りかた

あんなものを見てしまったからいけなかった。



屋敷の自分の部屋に戻り、

一人きりになってからが恐ろしかった。



布団を頭まで被っても


目の前にはあの、

狐の凄まじい笑みがちらついて、


完全に脳裏に焼けついてどうやっても離れない。



眠れない。

怖い。

春先でまだ夜は肌寒いはずなのに、じっとりと嫌な汗が滲んでくる。



時の鐘が何度か遠く聞こえて、

そのたびに

今は何時くらいなのだろう、
幽霊が出るという丑三つ時だろうかなどと考えてしまう。




そして、恐怖に耐えかねた私がとった行動は──


後で思い返せば、自分でも信じられないとんでもない真似だったと思う。