恋口の切りかた

「下りる! 自分で歩く!」

「こら暴れんな、危ねえ提灯が……!」

円士郎が慌てて、

「いいから大人しくしてろ!」

と、怒鳴った。


卒倒したり、
歩けなくなったり、

散々円士郎に迷惑をかけて、とうとう怒らせてしまった。


「ごめんなさい……」

しゅんとしながら謝って、情けなさにうつむいていると、

「先を照らしてくれるか?」

円士郎が一度しゃがみ込んで、
私の片手に提灯を握らせ、「よっ」と言って私を抱え直し再び歩き始めた。

片手で円士郎につかまり、
言われたとおり、もう一方の腕を伸ばして大人しく灯りを掲げて夜道を照らし、

ふと、灯りに照らされた円士郎の横顔が目に入った。


あれ?



彼は全然怒ってなさそうで、それどころか……


「エン、なんだか嬉しそう?」

「えー? そんなことねえよ」


にやついた顔のまま、円士郎はそう言った。


それはさっき一瞬だけ顔を覗かせて直ちにいなくなった、

悪さをしていた時の漣太郎の、
ちょっと意地悪な笑みで、


私は火照ったほっぺたで夜道を運ばれて行きながら、

自分は昔からこの悪そうな笑顔が嫌いではなかったんだな、と今さらのように知った。





円士郎に抱えられて屋敷に帰り着いて、

しかしこの日の、私の情けない出来事はまだ終わりではなかった。