恋口の切りかた

「貴様らはすぐに祟りだ狐だと! これでは捕り物にならんではないか!

例え鬼幽霊妖怪の仕業であったとしても、

仮にも刀を持つ武士ならば、
殿のために怪異など討ち取ってみせんかッ!」


ひえ、と同心たちは縮こまった。

あっしらは侍じゃあねえし、と目明かしたちは迷惑そうな表情になった。


「よいか! 古くは源頼光の鬼退治しかり、かの宮本武蔵も妖怪を成敗したのだぞ!

ふん! 火車だろうが狐だろうが、俺なら一刀のもとに斬ってみせようぞ!」


勇ましく刀を一振りして鞘に納める神崎帯刀。


いやご立派。

武士の鏡。

大した度胸だ。


──が。


ここへ来る途中の、同心や目明かしたちの失笑の意味がわかった。

こいつは確かに、奉行所内では煙たがられていそうだ。


戦乱の世と違い、天下太平の昨今では
神崎のような気骨のある侍が武功を上げる機会もなくなり、

嘆かわしいことに、世渡り上手なだけの軟弱な侍が幅を利かせていることも多い。


加えて──


こういう

真っ向勝負、
当たって砕けろ、
気合いで勝て!

といった思想だけではなく、

与力にはもう少し物事を論理的・合理的に考える力も必要なんじゃあないのか、と思う。


怪異のように見える事柄が、どうしてそのように見えるのか?

理由があるはずだ、と考えてしまうのは──


いつか虹庵が言ったように、俺が西洋の学問好きなためかもしれないが。