恋口の切りかた

この方「も」? 「また」?

どういうことかと尋ねると、虹庵は奇妙な話をしてくれた。


このところ虹庵の所に運び込まれた焼死事件の患者は、

昼間の者は運び込まれた時点で既に死んでいたのだそうだが……

夜に青白い炎で焼かれた者の中には、ここに来た時には生きていて
火傷自体は軽い者もいたらしい。


ところが、である。


火傷の治療を施し、回復したかに見えた者も、

数日のうちに、

突然胃の中身を吐いたり、
黄疸が出たり、

果ては
狂ったかのように暴れ回って、悶死してしまうのだという。


更に、この火に焼かれた者の吐瀉物までが、
暗闇で妖しく青く光っていたのだとか。


「ひい……そりゃ、やっぱり狐火だ」

「祟りに違いないですよ」


横で話を聞いていた目明かし(*)や同心たちは、たちまち震え上がった。


確かにこれは、不気味な話だ。

何も知らなければ、
危うく人外の所業と思い込みそうだが──


俺は伊羽から、
決して悪霊怨霊ばけものの類ではなく

「月読」という、
あくまでも人間の手による仕業だと聞かされているのだ。


「ええい、騒ぐな! みっともない!」

怒鳴ったのは──与力の神崎だった。



(*目明かし:正式な武士の役人ではなく、同心がポケットマネーで雇う捜査のお手伝いさん。犯罪に詳しいため、町の軽犯罪者を使ったりもした)