恋口の切りかた

そば屋、と文字が書かれている。



その屋台のそばに立って、

じっとこちらを見ている店主の

首から上は──


尖った耳があり、
目がつり上がり、
ヒゲが生え、
赤い口が耳まで裂けた、


真っ白な狐の顔だった。





にたり。

狐の顔が笑いを作って──





ふうっと明かりが消えた。


一瞬で

屋台も、
店主も、

幻のように闇にかき消え、


そこには暗黒以外、何もなくなった。





留玖?

おい、留玖どうした!

しっかりしろ……



円士郎の声が遠退いて、


私の意識は、蕎麦屋の明かりと一緒に闇に沈んだ。