恋口の切りかた

 
 【漣】

平司は悪いやつじゃない。
まあ、生真面目でめんどうくさいところはあるが、オレにとってはかわいい弟だ。

お前にひどいこと言いやがったけど、どうか平司のことを嫌わないでやってくれ。


平司が去ったあと、俺は刀丸にそう言おうとしたのだが──


心配無用だった。


それどころか刀丸は、俺が平司を嫌ってはいないかと逆に心配までしていたのだ。


やっぱり、刀丸はいいやつだ。

それだけじゃなくて、何と言うか


やっぱり、すごいやつだ──


俺はあらためてそう実感した。




そんなことに気を取られて、俺はまったく気がつかなかった。




俺が初めて刀丸に敗北したころと、

この河原での決闘とで



刀丸の動きが
劇的に変わっていたことに──。



『初めから剣術を教え込まれた』俺には、

気がつけなかったのだ。