恋口の切りかた

平司が河原から去った後、おれは心配になって漣太郎に尋ねた。

「ねえ、レンちゃん。レンちゃんは平司様が──」

「様とかつけるな! お前はあいつに勝ったんだからな!」

うーん……
こういうことは、やっぱり平司の言い分のほうが正しいような気がするけどなぁ。


ともあれ、おれは言い直す。

「……レンちゃんは平司が──嫌いなの?」

「あァ?」

恐る恐る聞いたおれに、漣太郎は鼻を鳴らした。

「バカ。何言ってんだ、あいつはオレの弟だぞ」

彼は事も無げに言って、平司が置いていった木刀を拾い上げてながめた。

「……嫌いなワケねえだろが」

「へへっ」

「なんだよ?」


おれは安心した。


「良かった。おとうもおかあもいつも言ってる。
弟や妹は守ってやらないといけないって」