【刀】
おれは木刀を下ろした。
「わかったか! 刀丸は強いんだ!」
漣太郎が平司にどなっている。
ジワジワジワ……
また近くでアブラゼミが鳴き出した。
──強さ。
そう、漣太郎は強さにこだわっている。
なぜかと聞けば、武士だから、といつも漣太郎は言う。
「わかったら、二度と文句つけるんじゃねえぞ! 平司」
「っぐ……まさか私が……農民の子に──っ!」
平司がくやしそうにうなだれた。
一方──。
平司がこだわっているのは身分だ。
これもきっと、武士だから──
──なんだろうな、と思う。
同じ兄弟なのにずいぶん違うなぁ……。
おれはそんなことを思いながら二人をながめていた。



