恋口の切りかた


 【円】

目の前で、いきなり人間が火を噴いて燃え上がった。



鬼之介のところで「話」を終え、
俺たちの話題は自然と鬼之介の長屋に現れた薄命そうな美人後家さんに移った。

これは一杯引っかけながらだということになって、

俺たちは極道にも真っ昼間から酒を求めて町に繰り出して、


杖を突き突き歩く鬼之介につき合ってられねえと、遊水は店でも探してるぜなどと言って先に行ってしまい──

俺はエッチラオッチラ歩く鬼之介にイライラしながらその後を追いかけていたのだが、

遊水を見失って、とりあえず鬼之介を連れていつもの居店に向かおうとしていた矢先の出来事だった。



ちょうど例の、三人橋のたもとだ。

待ち合わせでもしていたのか、
突っ立っていた男が横から現れた仲間たちに手を挙げて


その瞬間、背中から火が出た。


辺りは太陽に輝く瓦も眩しい真っ昼間の往来。

大勢の行き交う人々が目撃する、その中で


男はそのまま燃え続け、
あれよあれよと周囲が慌てるうちに真っ黒焦げの塊になってくずおれた。


吐き気を誘う強烈な臭いが立ちこめ、のどかな大通りはたちまち蟻の巣をつついたような大騒ぎとなった。



俺も鬼之介もその場に凍りついたまま、冗談のような凄惨な光景をただ眺めているしかできなかった。



炭になった男の仲間らしいチンピラが怒鳴り合っているのを見て、俺はようやく
焼け死んだ仏の正体が銀治郎のところの子分だと気がついた。