恋口の切りかた

「刀丸、こいつにお前の強さを見せてやれ」

木刀を大事そうに握ったまま、刀丸は困ったような顔をした。

俺が友達の証にあげた木刀で、その時も刀丸はものすごく喜んでくれた。


「大丈夫だって。
言ったろ? こいつ道場でもオレに一度も勝てたことねーし。お前のほうが絶対強いって。

年もお前と同じだし、びびることねえよ」


とは言え、平司は決して弱くはない。

それはいつも手合わせさせられている俺が良く知っている。


「うーん……いいのかな?」

しぶしぶという感じで、刀丸が平司と向き合って立った。


近くの木でジワジワと鳴いていたアブラゼミが、
ジジッと短く鳴いてどこかへ飛び去っていく。


「よし、始め!」