恋口の切りかた

燃え上がった炎に包まれ、

たちまち男は火だるまになる。




何……?

人が、何もないところで勝手に──




それは、



あまりに非現実的な光景で、



「え……? 大道芸?」

私は燃えている男を眺めたままそう呟いて、



火をまとった男はその場でのたうち回った。


炎は消えることなく、
背に続いて、今度は顔から火が吹き上がった。

言葉のアヤではなく、人間の顔から火が出た。


男は燃えながら助けを求めるように手を伸ばし──



「違う……芸じゃない!」


冬馬が、戦慄して言った。


ハッと遊水がこちらを向き、

「──っ見るな!」

私の頭を法被の胸に押しつけて視界を遮った。



見えなくなった周囲から、
往来の人々の悲鳴が阿鼻叫喚の如くに耳に飛び込んできた。