恋口の切りかた

「結城家には馴染めているのかもしれないですがね、
武士の世界自体には馴染めてませんでしょう。

おつるぎ様からは、こうして話していても、武家の女って印象が全くない」

橋の上を行き交う人々を眺めながら、遊水はどこか淡々と語って、

「かと言って──」

男装した私の腰の二本差しを指さした。

「そうやってお侍様の格好をしているからって、円士郎様や冬馬様とも違って
『武士』って感じもしませんぜ」

冬馬は──

冬馬も同じ結城家の養子だから気兼ねはいらないと、さっき言っていたけれど……


私は理解できた。


どうして、その言葉に心から素直に頷けなかったのか。


同じ養子でも、冬馬はおそらく──元々武家からの養子なのだ。

幼い頃からそう育てられた武士なのだ。


やっぱり私とは、違う……。


「別に非難してるんじゃあないですぜ」

唇を噛んでいると、遊水は私を覗き込んで
どきっとするような優しい微笑みを浮かべた。

「思い出しますね。
あの宗助めが消えたのはそこの欄干の上からだったか……」

と、遊水は私たちが立っている三人橋を示した。


「命が危険にさらされた修羅場でも大の男相手に怯むことなく立ち回れるのに、

肩肘張るでもなく、水みたいに純朴なままのおつるぎ様のお人柄は──

肩をそびやかしてる連中ばかりの御武家様の世界で、
俺にはとても貴重なものに思える」


がさつで乱暴な円士郎と違って、
遊水の物言いは包み込まれるように穏やかで優しくて、

緑色の瞳で見つめられて、そう言われて、
私はどぎまぎしてしまった。


赤くなる私に、遊水は眩しいものでも眺めるような視線を注いだ。


「ふふ、円士郎様がおつるぎ様に惹かれるのもよくわかりますね」