恋口の切りかた

恋わずらい──!?


「ちっ……違──」

「おやおや、こりゃまた可愛らしい反応だ。
こいつァ、図星でしたかね」

真っ赤になった私を見下ろして、遊水は被り手拭いの頭を叩いた。

「思われてる御仁は幸せ者だ」

そんなことを言って、緑色の瞳はニヤニヤする。

「他ならぬおつるぎ様の恋路とあっちゃあ、放っとけねえ。
俺でよければ相談に乗りますぜ?」

江戸っ子の空気を漂わせつつ、

遊水は本気なのか、
私をからかっているのか

軽い調子でそう言って、


黙ったまま私がうつむくと、


「そうやって一人で抱え込んでばかりだと、気が滅入るでしょう」


頭の上からは優しい声が降ってきた。


顔を上げると、遊水は欄干にもたれて
何でもないような表情で、

私ではなく遠くの商家の屋根のほうに視線を投げていた。


「抱え込んでると、人間ってのァ必要以上に深刻になったりするもんでね。
何でもいい。吐き出しちまったら楽になることもありますぜ」


本当に何気ない調子だった。


「俺にホイホイ相談してくるお人もいるってえのに……」

と、この年上の青年はちょっと苦笑するようにして、


欄干に背をもたれたまま空を仰ぎ見た。


「おつるぎ様にはおそばに、心の内を相談できるお人がいねえんじゃないですかい?」