恋口の切りかた

私は思わず頬が火照るのを感じた。


うう……恥ずかしいよ。

なんで、咄嗟に円士郎の名前を口にしちゃったんだろう。


それから、今の呟きを聞かれはしなかっただろうかと不安になって遊水の顔色を伺ったのだけれど、

「こりゃ偶然ですね。
今日はおつるぎ様はお一人で町に?」

遊水はとぼけた調子でそう言っただけだった。

「あ、ええと……冬馬と一緒で──」

私は冬馬が戻って来るまでここで待っているところなのだと
簡単に説明した。



はあ、と小さく溜息が漏れた。


肩を叩かれた瞬間に、私は一瞬でも何か期待したのだろうか。

振り返った先に、円士郎が笑いながら立っていたら──どうしたというのだろうか。


町で出会ったって彼が声なんかかけてくれるワケない。

嫌われてしまったのに……

なのに……



そんな私の顔を覗き込んだ遊水は、
ふふっと笑って

「恋わずらい、ですかね?」

とんでもないことを言い出した。