恋口の切りかた

「冬馬は、養子だった……ってことはさ、結城家に来る前はどこか別の家にいた……んだよね?」

「……はい」


何故、そんなことを思ったのか自分でもわからなかったけれど……


「冬馬は、前の家族のところに……戻りたいと思ったことは、ある?」


気づけば、私はそう尋ねていた。


そんなこと──
もう何年も、考えていなかったのに……。


結城家にいたいと思った。
私を置いてくれた父上や母上に、心から感謝している。

なのに──。





この私の問いに対して、

冬馬が返してきた反応は──私の想像を大きく逸していた。




「いいえ……!」




冬馬は、憎悪の滲んだ──
背筋が薄ら寒くなるような、

激しい怒りの目で、

どこか遠くを──
あたかも自分の過去を──

睨みつけているかのようにして答えた。




「私は戻りたいと思ったことなど、一度としてありません」


え……?


「あのような場所など……!」


それは

いつもの雨の日の、
そしてあの道場破りたちと相対した時の

激しい感情が揺れる瞳だった。