恋口の切りかた

風佳が円士郎との婚儀を嫌がって自害しようとした──。

その話には衝撃を受けたけれど、
私は自分のことで頭の中がいっぱいだった。


風佳を心配するどころか、


そのせいで円士郎と風佳の婚儀が先延ばしになった、

そう聞いてホッとしてしまった自分がいて……


自分は何て嫌な子なんだろう、と悲しくなった。



冬馬は、風佳のことを聞いてからずっと思い詰めたような沈んだ顔をしていて、


私とお供の人と、連れ立って大河家への道を歩きながらも

終始無言で──硬い表情をしていた。


先触れに行った中間の人は、しかし首を振りながら戻ってきた。


風佳はどうも軟禁状態のようで、

例え結城家のお子であっても、今は会わせるわけにはゆかないとのことだった。


門前払いを食らった私たちは仕方なく屋敷に引き返して──


「姉上と私は少し散歩して帰る。お前たちは先に屋敷に戻れ」

結城家の白い塀が見えてきた時、冬馬はそんなことを言い出した。


そんなわけには参りませんと首を振るお供の人に、ついてくることは許さんと言いつけて、

冬馬は私を「行きましょう」と促してさっさと歩き出してしまった。


「ああ、もう……! 円士郎様の悪い所が冬馬様にまで……!」

後ろからは、困り果てた奉公人のそんな言葉が耳に届いた。



冬馬と私はぶらぶらと町を歩いて──

そう言えば、こうして冬馬と二人で町に出かけるのは珍しいなと思った。


風佳との顔合わせで逃亡した円士郎を捜し回った時以来……かな。


私は少しだけ懐かしくなって、



いつの間にか、あの頃とは何もかもが変わってしまった気がした。