恋口の切りかた

遊水からこの話を聞かされた時点で、
俺の番頭就任は間近に迫っていた。


この国では、町奉行は大組(*)の番頭を兼任している。


とは言え、

城下の事件は役方(*)の仕事と高をくくっていた俺は、


この時はまさか、

この事件の捜査に、番方(*)の仕事に就いた自分が着任早々関わることになろうとは思いもしなかった。



これより間もなく、

この日の遊水の話は、城下を戦慄させることになる怪事件の
ほんの幕開けの部分に過ぎなかったと──



俺たちは思い知ることになる……。



(*大組:藩の軍隊の編成。騎乗の士分の大隊)
(*役方:現代で言えば警察機構に属する町奉行など、国の行政・司法・財政を担当する文官、つまり役人のこと)
(*番方:現代で言えば軍隊機構に属する番頭など、国の警備・軍事を担当する武官、つまり軍人のこと)