恋口の切りかた

ザバザバと音を立てて川から上がると、漣太郎は着物の横に転がった木刀を拾い上げて平司の足下に投げつけた。

かららん、と音を立てて、河原の砂利の上に木刀が転がる。


「拾え! 勝負だ!」と漣太郎は平司に言い放った。

「武士の子だ武士の子だって言うなら、てめえも剣で勝負しやがれ!」

「……いいでしょう」

平司はゆっくりと足下の木刀を拾い上げた。

「いつも道場では負けていますが、勝てないまでも兄上の目を覚ますために一矢報いてみせます」

「待って! 待ってよ二人とも!」


おれは慌てた。


「だめだよ兄弟ゲンカなんて。おれ、もう帰るから──」

何だかそれも漣太郎を怒らせそうだな、と思いつつもおれがそう言って川から上がると、

「ハァ!? 何言ってんだお前ら。平司とやるのはオレじゃねえよ」

漣太郎は河原の石に立てかけておいたおれの木刀を拾って、おれの手に押しつけて平司を指さして


とんでもないことを言った。


「よっしゃ! じゃあ刀丸、こいつぶちのめせ」



「ええええ!?」



おれ!?




大変なことになってしまった……。