恋口の切りかた

「めずらしいな。お前がこんなところに来るなんて」

ぶっきらぼうに漣太郎が言った。


確かに、おれもこの子が他の子供と遊んでいるところは見たことがない。

どうも兄と違って弟のほうは、寺子屋が終わるとまっすぐに町へと帰っているようだ。


「何か用か?」

「母上にたのまれたのです。近ごろは悪さもせず、兄上の様子がおかしいから心配だと」


悪さをしないと心配されるって──


「うえっ、カンベンしてくれよ、母上……」

漣太郎が情けなさそうな顔になる。


「様子を見てこいと言われて来てみれば……──っ兄上!」

「何だようるせえなァ」

平司は、おれをびしっと指さした。

「それは農民の子ではありませんか!」

う……。
おれは小さくなってうつむいた。

ぽちゃん、と
つかまえていた魚を水面に落として逃がしてしまった。