恋口の切りかた

「惚れた相手なら、妾にするという手もあるぞ」

親父殿は、かつて俺が留玖に言ったのと同じことを口にした。


その諭すような口調はやめてくれ、本気で泣きたくなるから……!

とか思いつつ、

「留玖は以前……妾というものに衝撃を受け、嫌がっていたようでした」


俺は遠い日に留玖と交わした会話を思い出して言った。

昨晩、俺も留玖を妾にする方法もあるとは思ったが──


「だから私は、留玖を妾にしたくはありません」

留玖を悲しませるような手段はとりたくなかった。


だが、正妻になるのも大泣きして嫌がったって……マジかよ。


やはり昨日の夜、口づけしようとしたのがマズかったのだろうか。

突き飛ばされて拒絶されたしなァ……。


「ふむ、お前が留玖のことを大切に思っているのはよくわかった」

ヘコんでいる俺に、親父殿はそう言って、

「本気で惚れているのか」

と真剣な顔で訊いた。


「はい」

俺はキッパリ答えた。


沈黙が落ちた。

またしても嫌な間があって──





「よかろう」

再び口を開いた結城晴蔵の顔には、いつものニヤリとした笑いが浮かんでいた。

「猶予をやろう」

親父殿の口からはそんな言葉が飛び出した。