【円】
再び呼ばれて親父殿の部屋に行くと、
眉間に皺を作った親父殿と
困り果てた顔の母上が待っていた。
畳の上にかしこまった俺を無言で眺めてから、親父殿は「はああ」と憐れむような目で嘆息した。
「円士郎、お前……モテんのう──」
「はァ!?」
「儂の息子のクセになあ……」
──ちょっと待てィ!?
「何なんだ、藪から棒に!」
あんまりの言われようだ。
「言っとくけどなァ──」
いきなりの自尊心をへし折られるような言い草に、俺はムッとしつつ反論を試みて、
「俺は城下じゃ結構……」
「留玖は、お前のことをなーんとも思ってないそうだ」
「な……なに!?」
親父殿の言葉がグサッと胸に突き刺さった。
「儂も、留玖にも少しはその気があるのかと思ったんだがな、
円士郎、お前のことはただの兄として慕っているだけだそうだ」
──グサリ、
「しかも、他家に養女に出して妻に娶りたいというお前の提案は、大泣きして嫌がっておったぞ」
──バッサリ、
「振られたな、円士郎。完全にお前の一方的な片思いだ」
──見事に真っ二つ、
だった。
ぐうの音も出ないほどに斬り捨てられて、その場にくずおれた俺に
親父殿は同情の視線を向けた。
「許嫁には自害しようとしてまで婚儀を破談にしてくれと頼まれ、妻にしたい相手からもこうまで嫌がられるとはな。
我が息子ながら憐れになるのォ……」
ヤバい、なんか泣きそうだ、俺。



