恋口の切りかた

涙ににじんだ視界の中で、
父上と母上が困ったように顔を見合わせた。


「わかった、留玖」

声を上げて泣いていると、
やがて、父上の温かい声が降ってきた。

「案ずるな。お前はこれからも儂の娘だ」


それから父上は困惑気味の表情のままで、
まだ肩を震わせている私を見つめた。

「それでは、お前は円士郎のことを兄として慕っているだけか?
それ以上の──男女の感情を抱いてはいないということか?」


男女の感情……。


絶対に許されないその響きに、どきんと音を立てた胸を

私は着物の上から押さえた。



「ございません!

私は──結城家の養女にしていただいた身で、

そのような大それた思いを抱くはずがありません!」



押さえた手の下で、鈍い痛みが広がるのを感じたけれど

かき消すように、そう私は叫んで──



「わかった」

と、父上が頷いた。

「儂の勘違いだったようだ。下がって良いぞ」

その言葉にようやく安堵して、私は父上の部屋を後にした。