恋口の切りかた


 【剣】

円士郎を突き飛ばして、自分の部屋に逃げ込んで……

父上に見られてしまったという事実に怯えて──


それから、

傷ついたような円士郎の顔がちらついて、私は同時に別の恐怖が頭を起こすのを感じた。


どうしよう、と思った。

きっと……円士郎に嫌われた──。



どうしてこんなことになったんだろう。

どうして──エンはあんなことをしようとしたのかな。


わからない。

でも……私は、あのとき──




──嫌じゃなかった。





最低だ、私……!
こんなの、許されるわけない。


頭ではそう思っても、


円士郎の手が触れた場所は、火照るような熱を帯びていて

彼の優しい瞳を思い出すだけで、どきどきと胸がうるさく音を立てて……


円士郎は、結城家の当主になる人だ。
私なんかが相手をしてもらえる人じゃないんだ。
私はただの妹だ、
円士郎の妹でいられるだけで幸せなんだ──。


私は必死に言い聞かせて、自分の感情を抑えつけて、消してしまおうとして、



次の日──

怖くて父上の部屋に近づくこともできずにいた私の耳に、何か激しい怒鳴り声と物音が聞こえてきた。

何事だろうと思わず様子を見に行ったら、

「どこでもいい! 留玖を、結城家から別の家に養女に出して下さい!!」

締め切られた襖の向こう、父上の部屋から聞こえてきたのは、
円士郎のそんな言葉だった。