恋口の切りかた

 
 【刀】

ちょうどおれが十一匹目の魚をつかまえた時だった。

「兄上!」と岸のほうから声がした。

首をめぐらせると、
河原の砂利の上を、身なりの良い一人の少年がこちらに向かって歩いてくる。


自分たちと同じくらいの年齢の少年だ。
見たことのある少年だった。

いつも寺子屋で誰とも口をきかず、他の子供がさわいでいても一人じっと黙って座っている物静かな少年だ。


「げっ、平司かよ」と言って、漣太郎がいやそうな顔になる。


「ヘイジ?」

おれが首をかしげると、


「ああ、こいつはオレの弟だ」

と漣太郎は言った。