恋口の切りかた

「これまで風佳殿をないがしろにしておきながら、結納を前に、急に優しいお言葉でもかける気になったのですか!?

なんと身勝手な──!

兄上が風佳殿の許嫁ならば、その前に今この場を目撃して──すぐさま私を叩き斬るべきではないのですかッ!?」


──はァ!?


冬馬が何をトチ狂ったことを言い出したのか、
俺はサッパリわからず唖然とした。


そんな俺を冬馬は我慢ならないという様子で睨みつけて、俺の着物の胸ぐらをつかんだ。


「兄上がそんなだから──っ風佳殿は──」

「違います!」


冬馬が何を言いかけたのかわからなかったが、風佳がそれを遮って叫んだ。


「違います! 円士郎様にお相手をしていただけなかったからではございません!

わたくしが泣いていたのは……そうではありません……」


「なら──俺との婚儀が嫌で、泣いてたか?」


俺は鼻を鳴らしてそう聞いて、

今度は、否定の言葉は返ってこなかった。


マジかよ……!


嫌われているという自覚はあったが、大泣きして冬馬に婚儀は嫌だと訴えるほど──俺は嫌われていたのか?

それはさすがに少し衝撃だった。


まあ、それならこっちも心が痛まなくていいのかもしれねえけどよ……。


「よくわかった」と俺は苦笑いして、


「帰ります……」

風佳は青い顔のまま、きびすを返して部屋を飛び出して行った。