恋口の切りかた

屋敷に戻るかと歩き出して、



そうしたら……



後ろから袖を引っ張られて、

振り返った俺に、

留玖は



行かないでと告げた。





「エンがいなくなったら……どうしたらいいのかわかんないよ……!

私にはエンしかいないんだよ──

もうエンしかいないのに……」




決心した矢先にこんなことを言い出されて、たちまち俺は決意がぐらついた。




「風佳と行かないで。

私を一人にしないでよ、エン……!」




留玖──




そうだ、留玖は

──俺のせいで一人になったんだ。



「ごめんな、留玖」



俺は、うつむいたまま震えている留玖に謝って、

俺の袖をつかんだままの留玖を抱きしめたかったが、


町中だと言い聞かせて何とか思い留まって、


そっと留玖の手をほどいて──




一瞬前までとは真逆の揺るぎない決意を胸に、屋敷への道を戻り始めた。